明日の君と


ボクは腕の中にいる香奈さんをいつまでも離さなかった。
彼女もまた、ボクの腕の中でなんとなく安心しているようだった。
彼女の頭はちょうどボクの心臓の上にある。
きっとボクの鼓動が聞こえていることだろう。


「香奈さん、キス、していいかな」

ボクは我慢できずふと自分の欲望を口にした。
彼女はボクの胸から顔を上げボクの目を見つめ、そしてそっと瞳を閉じた。
ボクは少し腰をかがめ優しく彼女の唇にキスした。
でも、その一度では我慢できずボクは何度も何度も香奈さんに口づけた。
ついさっき、偉そうなことを考えていたくせに、すでにボクは自分を抑えることができなくなってきていた。
胸に熱いものがこみ上げて、キスをすればしただけ、より強く彼女が欲しくてたまらなくなった。
彼女の唇を優しく吸う、そして舌をこじ入れて彼女の舌に絡め合う。

「イ、イツキ」

口を離した時に不意に彼女の口から吐息とともに漏れたボクの名前。
香奈さんのあの大きな瞳を見つめる。
ボクを魅了してやまない美しい瞳。
その瞳は潤んでいて、今までに見たことのない女の艶っぽさを漂わせていた。

「香奈さん………」

ボクはもう一度、彼女の唇を激しく求めた。
抱きしめていた彼女の体からストンと力が抜けた。

「か、香奈さん、ボ、ボクもう………」

どうにも我慢することはできなかった。

「ボク、もう、これ以上、我慢できない……」

彼女の頭が縦に小さく動くのが見えた。
迷いは消えた。
ボクは香奈さんの小さな体を抱き上げ、ゆっくりとベッドに横たえた。

< 65 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop