明日の君と
ボクは香奈さんをそっとベッドに横たえ、もう一度キスした。
「いいんですね」
ボクは確かめるように香奈さんに訊いた。
「そんなこと、答えさせないで……」
彼女は潤む瞳でボクに言った。
ボクらは服を脱ぎ、もう一度きつく抱きしめあった。
温かい………
柔らかい………
そして、この中野香奈という存在の全てが愛おしい。
胸に焦燥感にも似た熱い感情がこみ上げてくる。
ボクの目には何故か判らないが涙が溢れ出た。
そして再び、彼女の愛おしい唇にボクの唇を重ねた。
飽くことなく彼女の全身ありとあらゆるところをこの手で優しく撫でる。
香奈さんはきつくボクに抱きついて、泣き声のような吐息でボクの名前を何度も呼んだ。
ボクも彼女の名前を呼びながら彼女の口をボクの口でふさいだ。
また彼女の吐息が漏れた。
そしてボクは体重をかけ香奈さんの中に入った。
彼女は温かく、柔らかく、そして優しくボクを包み込んで受け入れてくれた。
本能的に体が動く。
ベッドの軋む音と、ボクと香奈さんの荒くなった息づかいだけが聞こえる。
彼女の体が反り白い喉元がボクの目の前にあらわれた。
ボクはそっと唇を這わした。
また香奈さんの口からボクの名前がこぼれた。
ボクはこのまま、本当に香奈さんとひとつになりたいと思った。
細胞のひとつひとつ、すべて彼女の体に融合してしまいたい。
そしてそのまま永遠に彼女と生きていきたい、そんなことさえ神に願っていた。
しかし、無情なことにその願いは叶わなかった。
背中から胸に、そして脳内に駆け抜ける快感を伴い、ボクは香奈さんの中で全て果てて、唐突にこの現実に引き戻された。
その胸を焦がすような、そして全てを真っ白にするような快感の津波の後に、彼女への愛おしさが狂おしいほどボクを占拠して、ボクは力の限り彼女を抱きしめ続けていた。
そしてボクの目から再び涙が流れた。