明日の君と
君とボク


~6年が経って~



ボクは現在、都内にある私立の女子高で社会科の教諭をしている。
大学時代に教員資格を取得したものの、地元の山梨では教師になることはできなかった。
そんな時に運良くというか、ベルの鈴木店長のコネクションで今の勤め先の採用試験を受けることができ、めでたく採用となった。
おかげで、店長には一生頭が上がらなくなってしまったわけだが。
未だに休みの日には、上客としてベルには足を運んでいるのだから、まぁ、その辺は良しとしてもらおう。
因みに2年前、店長に娘が産まれ店長はすっかり親バカになっている。
店長はいまや、しっかり者の美人の奥さんの尻にすっかり敷かれっぱなしの体である。

ボクの勤務する学校は夏休みに入ったが、教員であるボクは生徒と同じように休める訳もなくお盆の週になって、やっとまとめて休暇が取ることができた。
その休暇を利用して、ボクは清里の実家に帰ることにした。
もちろん妻と一緒にだ。
ボクはこの春に結婚した。
まだまだ稼ぎは少なくて、妻には苦労をかけている状況ではあるが。
でも、とても幸せだ。


一方、ボクの実家はというと、昨今のペットブームに便乗して、ペットと泊まれるペンションとして売り込んで、今ではそれなりに固定客を得ているようだ。
フリードリヒと、その息子のヴィルヘルムは今やペンション フォレストの看板犬となっている。




「ただいま」

「あ~ら、遅かったじゃない、道路混んでたの?里沙ちゃんも、中野さん達ももう着いてるわよ」

母はボクらを急かすように言った。

「お義母さん、ただいま。ご無沙汰しててすみませんでした」

妻が母に挨拶をしている。
家の中から里沙さんが出てきた。

彼女は卒業後、四国に戻り、林業を営む実家の取引先の会社に勤めている。

「武田君、香奈、お久しぶりね、元気だった?」

里沙さんの言葉にボクの妻は答えた。

「里沙、久しぶりっ!アンタこそ元気だったかい?今夜も昔みたいにいっぱい飲んで、いっぱいお話ししよう!ねっ、イツキ」

ボクは妻の香奈に向かって言った。

「香奈さん、あの時のワインまだとってあったら飲んじゃおうよ。かれこれ21年物になってるんじゃないかな?確かボルドーの赤だったよね?」







~了~


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