明日の君と
ここのところ、なかなかイツキと会えなくなってしまっている。
まぁ、寂しいけど仕方ないか。
もう、お互いに社会人だし、学生だった頃のようにはいかないか。
みんなそうなんだろうし。
しかも、イツキのヤツったら教員なんかになったもんだから、私が休みの土曜日だって仕事に行ってしまっている。
しょうがないのはわかってるけど、実際のところもっとカマってほしかったりもするわけで。
そんなことを考えながら、少し1人でイジケていると携帯が鳴った。
あっ、イツキからの電話だっ!
『もしもし、香奈さん?遅くにゴメン。まだ起きてた?』
彼の声を聞いたとたんに、さっきまでのクサクサとした気分は姿を消していった。
「うん、まだ起きてたよ。イツキの声聞かないと寝付けない体質になっちゃったからね」
私は笑いながら彼に答えた。
『ハハハハ、ボクも香奈さんの声聞かないとなかなか寝付けないよ。電話できなかった日なんかは、寝酒に缶ビール3本空けちゃいますから』
「イツキ、それってさ、私を口実にしてただ単に、ビール飲んでるだけじゃないの?」
私の言葉に、電話のむこうから、大正解、と彼の笑い声が聞こえた。
『ところでさ、香奈さん、明後日の日曜日に会えないかな?』
嬉しい言葉を聞くことができた。
「私なら、明日の晩からイツキんちに行ってもいいくらいだけど」
私のちょっぴり大胆な発言に彼は嬉しそうに答えた。
『そりゃ、ボクとしても願ったり叶ったりです。多分、5時頃には帰れると思いますから、一緒に夕飯食べましょうよ』
「じゃあ、私が腕によりをかけて料理を作ってあげるよ。最近はやっと料理を覚えてきたから、味見係をしてくれたまえ、イツキ君」
私の言葉に彼は大笑いして言った。
『味見係は構わないけど、ちゃんとした人間の食い物作ってくださいよ。あっ、あと、もしボクが帰ってなくても勝手に家に上がってもらってて構いませんから』
「ハナからそのつもりだったよ。それにしても、イツキ、私がいつそんなヒドい料理を作ったってんだい?」
携帯のむこうがわでイツキは、ゴメンゴメン、と笑いながら謝っていた。