明日の君と
玄関の鍵を開ける音が響いた。
「ただいま、香奈さん」
ちょっと申し訳なさげに眉を下げながらイツキが帰ってきた。
そして、彼の後ろからショートカットの女の子たちが3人続いて入ってきた。
「おじゃましまぁ~す」
若々しいキャッキャした声と一緒にその3人は私に向かって小走りに向かってきた。
「武田先生の彼女さんですか?はじめまして、バレー部の大塚です。そして、このコが横井で、このコが高橋です。よろしくお願いしまぁ~す」
「あっ、どうも、中野香奈です」
私は彼女たちの勢いに、『大人の女』の余裕をみせるどころではなかった。
「武田先生~、彼女さんスゴくかわいいじゃないですか!」
イツキは横井さんにそう言われてパシパシと背中を叩かれていた。
イツキも、いやぁ、みたいな仕草で頭をポリポリとかいていた。
ってか、アンタ、そんな態度じゃ生徒にナメられるわよ。
「ねぇねぇ、中野さん、武田先生とはどこで知り合ったんですか?」
今度は高橋さんが私に訊いてきた。
「彼は大学の後輩だったのよ」
私の答えに彼女たちは再びキャッキャ騒ぎだして、年下の彼氏だ、とか、アネサン女房だ、とか勝手に盛り上がっていた。
「おい、お前たち、もう充分だろ?さっさと帰れ!明日はせっかくの休みなんだから」
そのイツキの声に彼女たちは、ハ~イ、と口を揃えて答えた。
「中野さん、突然お邪魔しちゃってゴメンナサイ。武田先生のことお願いしますね」
大塚さんが、片目をつぶりながら私に言った。
「うん、任せといてよ。アイツが立派な教師になれるように尻叩いてやるから」
3人は礼儀正しくぺこりとお辞儀をして帰っていった。
私は、フゥっとひとつ息をついた。
彼女たちが帰ったあと、急に静かになったような気がした。
「香奈さん、ゴメンね。変なことにつき合わせちゃって」
「私は別にいいけど、イツキ、アンタ大丈夫なの?あのパワーには圧倒されちゃうね」
私の言葉に彼も同意するように頷いた。
「あれが若さだね。まっ、こんなこと言うとジジクサイけど、ボクも、もう25歳だからね」