明日の君と
今夜は職場でお花見をすることになっている。
朝、少しだけ一也のことを思い出してしまい、辛い気持ちになったが、朝日奈君の歓迎会も兼ねているので顔だけは出すことにした。
仕事も終わり近くの公園に向かった。
社長は朝日奈君を連れて4時過ぎには場所取りに行っていた。
その甲斐あって満開に咲き誇った桜の下でお花見をする事ができた。
社長の乾杯の音頭のあと各々お酒やおつまみを楽しんでいた。
朝日奈君はというとお酒をひとりひとりに注いで回りその都度返盃で飲まされまくっていた。
そんな調子なので、私のところに来る頃にはすっかり出来上がっていた。
朝日奈君のメガネの奥の目はトロンとしていて、顔はスッカリ真っ赤になっている。
「七尾さん、オツカレサマレス……」
彼は酔ってもなお、人好きされるような笑顔でビール瓶を傾けてきた。
「朝日奈君、大丈夫?だいぶ飲まされちゃったでしょ?」
私は彼の赤い顔がおかしくなり笑いかけけた。
「う~ん、あんまり大丈夫じゃないです。七尾さんは優しいですねェ。しかもお酒も強い」
彼は私の隣に座ってよくわからないことを言っている。
「あまり無理しないでね。酔いつぶれちゃったら誰も面倒みてくれないから」
「あぁ~、七尾さんは本当に優しい。しかもすごい美人だし」
あらら、完全にカラミ酒ね。
「ボクですね、出社して最初にお会いしたのが、七尾さんで本当によかったッス。この会社なら頑張れると心底思ったッス」
完全に前後不覚のようね、どうしようかしら、と思っていると
「朝日奈ぁ、七尾ちゃんにチョッカイ出しくさったらオメエ許さんからな」
と社長が言いながら朝日奈君の首根っこを掴んで連れて行ってしまった。