明日の君と
「朝日奈君、辛かったよね。その気持ちは他人には理解できないよね、きっと。でも、今は朝日奈君、しっかりと生きているんだから、月並みな言い方かもしれないけど、それ以上生きることの出来なかった彼女の分まで頑張って生きていかなくちゃ」
私はかつて一也を失った時に香奈にもらった言葉を朝日奈君に伝えた。
「すみません、七尾さん、そうですよね。彼女の分頑張っていかなきゃ、ですよね」
彼は苦しそう顔を歪めながら一生懸命微笑もうとしていた。
そんな朝日奈君を見て、私は一也とのことを思い出した。
それはいつも自然と胸に虚しさを与え、私に涙を促す。
「朝日奈君、私ね、もう7年も経つんだけどね、つき合ってた人が事故で亡くなったの。さっきの言葉ね、私が落ち込んでどうしようもない時に、香奈が言ってくれた言葉だったの。もちろん、香奈は一生懸命私を慰めて励ましてくれるために言ったんだと思う。だけど、思ってる以上に気持ちを切り替えることって、難しいのよね。結局、私も7年たっても全て吹っ切れていないし。彼が忘れられない。彼は実在したんだもの。そして、未だに彼の死を心のどこかで受け入れられてないのも事実なの。だからかな、未だに人を好きになることが怖い。また、急にいなくなってしまったら、とか考えてしまってね。あと、彼を忘れてしまうのじゃないかって、その事が怖いの。でも、そう思いながらも、心のどこかで、このままじゃいけないって思ってもいるの。あぁ~自分でなに言ってるのかわかんなくなっちゃった」
私は言葉同様に整理のついていない気持ちを口にした。
朝日奈君は驚いたように私を見ていた。
「七尾さん、七尾さんもそんな辛い出来事があったんですね。すみません、なんか、僕ひとりで勝手に気持ちを吐き出しちゃって。すみませんでした」
「気にしなくていいのよ。私だって似たようなものだから」
私は、自分の目から涙が流れるのを頬に感じた。