ラブ&ロイド
二極化の末路
それからというもの、颯は瞬く間に「校内最強モテ男子」の称号を獲得し、女子人気を上げて行った。アンドロイドにも関わらず。…いや、完璧に作られたアンドロイドだからか?

「今日もか…」

相変わらず透明になって歩く颯が、呆れたように呟く。校門には、颯の登校姿を拝みたい女子達が列を作っていた。

「しょうがないじゃん。颯、モテるんだから」

怪しまれないように、小声で答える。

「じゃあ、いつも通りね」
「ああ」

女子の花道の後ろをそそくさと通り抜け、校舎に一番近い所に立って列の一部となる。…確かに私も颯のファンといえばファンだが、目的はもう一つある。アンドロイドである颯が、一般社会で生活していけるのかどうか。その監視が、私が颯と一緒にいる本来の目的だ。

「…もういいよね…」

左足で地面を軽く蹴る。颯への合図だ。

「ねぇ、颯先輩まだかな?」
「二年生の先輩に聞いてみないと…」

フェンスを隔ててすぐ後ろに透明状態を解除した颯がいることに、胸を躍らせっぱなしのこの一座は気づく由もない。

「あっ、来た…!」

校門付近で小さく叫び声が上がる。

「来た、来たって!」
「カメラ準備、よし!」

途端にざわつき出す。そして、校門に颯が現れた。

その瞬間、まるでアイドルでも現れたかのように悲鳴のような歓声が辺りに広がる。それを一切気にせず歩く颯に、手を振る人もいれば、危うく倒れそうになる人もいる。

…これが、颯の日常だ。
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