ラブ&ロイド
「ここで一回くらいこういう機会作っとかないと、すぐに追いつかれるよ! 皆、行動が早いんだから…」

愛の目が少し揺らぎ始める。

「…愛?」
「…まさかこんなタイミングで言うことになるとはね…」

そして私達は、愛の口からまさかの言葉を聞くことになる。

「…私、零泉のこと好きだったんだ」

切なげな表情が、愛のものになった。

「まぁ、普通のよくある片思いなんだけどね。私、なかなか好きって言えなくてさ。そうやって行動に移せなかったから、学校外で彼女ができてて…。それでもやっぱり言おうと思ってたんだけど、今度は零泉が不登校になって…」

どんな言葉をかけたらいいのか、私には皆目見当がつかなかった。

「…今は颯くんのファン…だ、って自分でも思い込んで、それで気持ちを紛らわせようとしてるんだけど、やっぱり無理でさ…」

その瞬間だった。

「馬鹿じゃないの!?」

蛍の手が愛の頬をはたいた音が、教室に響いた。

「蛍…?」
「颯ファンだったのって…失恋の埋め合わせだったの!? 私達のことバカにしないでよ! 私達は、純粋に颯ファンなんだから! …それにそんなの…零泉にも失礼だって!」

吐き捨てるように言うと、蛍は教室を飛び出して行った。

「あっ、蛍!」

葵が慌てて後を追う。私も追いかけようとすると、私の腕を誰かが掴んだ。

「…やめておけ」

颯だった。
< 13 / 50 >

この作品をシェア

pagetop