ラブ&ロイド
「研究所に来ること自体は、何も問題は無い。結ももう子供じゃないんだから、仕事の邪魔をすることもないと思うしな。…でも、そういう話をしたいなら話は別だ」
「…直談判、できないの?」

颯と別れなければいけない…。その現実が、迫ってくる。

「第一、職員の娘とはいえ、関係者じゃない人の意見を聞いてもらえるとは思えない。結が思っているより、研究所は厳しい所なんだ」
「…そんなの、分かってるよ…」

分かってなんていなかった。だけど、強がっていないと、まぶたに溜まった涙を抑えていられなかった。

「…だから」

お父さんの目が、決意を帯びたものに変わった。

「お父さんも一緒に、所長に言ってみる」
「…お父さん…」
「今まであまりわがままを言ってこなかったからな。たまには言うことを聞いてあげないと。…いいよな?」

お母さんは首を縦に振った。

「…うぅっ…」

正直、お父さんの最初のセリフで、もうダメだと思っていた。もう、颯と別れなきゃいけないのは決定だと思っていた。

だけど…お父さんは、そんな人じゃなかった。

初めて感じたような「父の優しさ」に、せっかく強がってまで抑えていた涙がこぼれ落ちたのは言うまでもないだろう…。

翌日。

「ここが…」
「結が来るのは初めてだからな。驚いただろう?」

想像よりはるかに大きい研究所に、私はお父さんと二人で来ていた。
< 26 / 50 >

この作品をシェア

pagetop