ラブ&ロイド
「何か緊張する…」

応接室に通された私は、やけにそわそわしていた。

「そんなに緊張しなくていいじゃないか。…な、颯君?」
「ええ。…緊張した所で、何かが変わるわけじゃない」

右と左から挟み撃ちにされる。…余計に緊張する…。

「あっ、来た…」

ドアをノックする音が聞こえる。半ば条件反射的に、私は立ち上がった。

「ど、どうぞ!」

本来私が答えるべきじゃないんだろうけど、この時の私は、颯と私との行く末がかかっていると思い込んでおり、かなり焦っていた。

「お待たせして申し訳ありません」

ドアが開き、入って来たのは五十代ほどと思われる男性だった。少し強面だったが、さらに歳を重ねていてなおかつ強面な斎遠先生に比べればそれほどでもなかった。

「アンドロイド開発研究部部長の六角譲(ロッカク・ジョウ)です。…まあ、お座り下さい」

私達がおずおずと座ると、六角さんは話を始めた。

「さて、三鷹係長…だいたい察しはついていますが、今回はどのようなご用件で?」
「…理屈を並べても無駄かと思いますので、単刀直入に述べさせていただきます」

お父さんは、六角さんの目をまっすぐ見た。

「試作機第五号『五嶋颯』の返却を破棄し、完成形としてそのまま納入をお願いしたいのです」

何を言っているかはよく分からなかったけれど、ひとまず颯を返すのをやめてほしいと言っているはず、という期待は持てた。
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