ラブ&ロイド
六角さんの顔から、笑みが消えた。

「俺は変だとも何とも思わない!」

座っているのに立ちくらみが起きたような、そんな感覚だった。

アンドロイドである颯を、人間である私が好きになってしまった。そんな現状すらも、颯は受け入れてくれている。本人の口からはそんなことは一言も言われていないのに、颯から「好き」って言われたような、そんな気持ちもあった。

だけど…今はそんな感情に浸っている場合じゃなかった。

「颯!」
「颯君!」

お父さんと二人で颯の体を取り押さえる。

「なっ…まだ言い足りない! 言っておかないといけないことが山ほどある!」
「一回落ち着いてよ!」

感情が高ぶると、なかなか落ち着かない。そんな実例も、説明も一度も見聞きしたことはないけれど、それは私にも分かった。

「やめろ! やめてくれ、結!」

抵抗する颯をどうにか車に乗せ、そのまま帰宅した。

「クソっ…」

家に着いてもなお、六角さんへの怒りは鎮まらないようだった。

「颯…」

そんな颯を、私はただ、隣で見ているしかなかった。いつもの私の部屋のはずなのに、何だかやけに広く、空しく見えた。

そんな時に、インターホンが鳴ったのは必然だったのかもしれない…。

「ピンポーン」

無機質な音。

「結、出てくれる?」
「は~い…」

お母さんに言われ、玄関のドアを開ける。そこにいたのは…愛と、蛍と、葵だった。
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