ラブ&ロイド
「この前、間違ってノートを持って帰ったらしくて、ちょっと寄った」

さすがアンドロイド、と言うしかなかった。とっさのことにも瞬時に対応できる、その頭の回転の早さは、当然ながらすさまじかった。

「何だ~」
「焦らさないでよ、結…」
「てっきり同居してるとか思っちゃうじゃん…」

葵の言う通りなのだが、首を縦に振れるわけがなかった。

「…はぁ…どうなることかと思った…」

三人が駅前のコンビニに寄っている間、颯と私は外で待っていた。

「予定があるんだったら教えてよ…」
「俺は執事じゃない。それに、研究所に行くことの方が何倍も重要だ」
「それは分かってるけど…」
「第一、帰ってきてすぐに家を出たら間に合ったはずだ」
「はいはい…」

颯に振り回されていた。そんな感じがした。だけど不思議と、悪い気はしなかった。

「…ねぇ」

何とはなしに、呼んでみた。

「颯って…アンドロイドが私達と同じように暮らしていけるかどうかの調査のために来たんでしょ?」
「それがどうした?」
「どう? 暮らしていけそう?」

少しの間の後に、颯はこう答えた。

「…その手の質問は俺は苦手だ。人間は答えのない質問にも答えるが、アンドロイドはそうはいかない。その点で言えば、俺は人間として生活するのには向いていないのかもしれない。ただ…少なくとも、三鷹家の四人目の家族にはなれた」
「四人目の家族…」

その言葉は、颯が言っているからこその重みを含んでいた。
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