ラブ&ロイド
「結って、零泉とカラオケ行ったことある?」
「零泉と? …いや、ないけど…」
「…実はね、さっきの颯くんの歌い方…零泉にそっくりなんだ」
「どういうこと?」
「颯くんが最初に選んだ曲、零泉がカラオケに行く時絶対最初に選ぶ曲なの。で、最初のフレーズをちょっと長めに伸ばす癖もあって」

言われてみれば、確かに最初のフレーズはちょっと長めに伸ばしていた気がする。

「他にも、よくよく考えてみれば零泉との共通点が多い気がしてね」
「考えすぎじゃないの?」
「だといいんだけど…」

私も、少し考えてみた。

零泉が学校に来なくなってしばらくしてから、颯が来た。当たり前のように、零泉の座っていた席が颯の席になっていた。私達四人が零泉のことで言い合いになった時に、ポーカーフェイスを崩さなかった颯はどこか暗い顔をしていた。そして、愛のこの証言…。

「まさか…」

一瞬だけ、颯=零泉という方程式が頭をよぎった。すぐに消そうとしたけど、下敷きを敷かずに書いた文字を消した時のように、完全には消えなかった。

「…うん、やっぱり考えすぎだよ」
「そう…だよね、うん…」

隣同士、ドリンクサーバーにジュースを入れた。私のコップに注がれたメロンソーダは、やけに泡が多く、満タンにしたつもりが半分ほどになっていた。半分になったメロンソーダに少しずつ継ぎ足しを繰り返し、どうにか七分目ほどにすると、氷をいくらか追加し、部屋に戻った。

「颯の後歌いづらいよ~…」
「でも葵、私より歌上手なんだからいいじゃんか~」

部屋では相変わらず、蛍と葵が楽しそうに笑い合っていた。私達はカモフラージュするように、笑顔を作って部屋のドアを開けた。
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