ラブ&ロイド
その日は八時くらいまで、カラオケで歌い続けた。

「ふぅ…疲れた…」

ベッドに大の字になり、天井を眺める。

「かなり疲れているようだな。…話、明日にするか?」

脳の片隅に置いておいたつもりで忘れていたことを思い出した。

「気遣ってくれてありがと。でも…今日、聞きたい」

颯が改まった言い方をするなんて、初めてだった。直感的に私は、これから話すことはとても重要なことだと感づいていたのかもしれない。

「分かった。思いのほか長くなりそうだ。風呂に入ってからの方がいい」
「うん…」

さっきの直感が、少しだけ確信に近づいた気がした。

「…」

シャワーの雨が、お風呂の床を打ちつける。そのすべてを体で受けることができない私は、しばらくその雨の中でたたずんでいた。

今日の颯は…どこか、変だ。いつもの颯のポーカーフェイスが少し崩れて、小さな影が見えていた。

いくらアンドロイドだからって、機械的に「疲れる」ということはあるに違いない。そんな事態を示すために、颯にはこんな表情をするプログラムも備わっているのかもしれない。

だけど…もしそうなら、研究所で怒鳴ったのもそういうことになるのか?

私にはどうにも、この二つが機械でプログラミングされた結果だとは思えなかった。あり得ない話かもしれないけれど、颯に感情がある、そんな風に見えた。

「考えすぎ、だよね…」

あの時の愛と同じように自分に言い聞かせ、体を洗った。
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