ラブ&ロイド
「私が知ってる人…?」
「ああ」

思いつく限りの顔を思い浮かべ、その中から研究所の所長でもおかしくなさそうな人を探していく。

「…誰…?」

でも、それらしき人はとっさには思い浮かばなかった。

「担任」

颯の口から出たその二文字で、私は雷にでも打たれたような気分を味わった。

「…斎遠先生…?」
「斎遠守。高校で教鞭をとる傍ら、研究所の所長も務めている。結は知らないかもしれないが、人工知能やアンドロイドなど、その方面に関しては第一人者とも言われる科学者だ」

そう言われると、そうだとしてもおかしくはないことに気づく。

「そして所長が新たに研究を始めようとしていた分野がある。何だか分かるか?」

斎遠先生が研究者だということも初めて知ったんだから、そんな問題、答えられるわけがなかった。

黙っていると、颯はすぐに答えを言ってくれた。

「医療分野だ。それも…脳科学」
「脳科学?」
「脳のメカニズムを研究、解明する」
「それくらいは知ってるって」

確かに私は成績は下から数えた方が早いけれど、そんなことまで知らないと思われたら困る。一応これでも、研究者の娘なんだから。

「…おかしいとは思わないか?」

颯の口調が、真剣なものに変わった。
< 38 / 50 >

この作品をシェア

pagetop