ラブ＆ロイド
颯の正体が零泉だという仮説は、もう私の中でも否定できなくなっていた。

「…どうして…？」

私の体は、勝手に問いかけていた。

「…不登校になる少し前、俺は彼女と別れた。一条があの時言っていたとは思うけど…俺には確かに、学校外に彼女がいた」

零泉がベッドから立ち上がる。

「それと同じ頃に、一条が俺のことを好きだってことを知った」

アンドロイドとしての抑揚のない喋り方が染み付いてしまっていたのだろうか、やはり零泉の喋り方は抑揚がなかった。もしかしたらまだ嘘をついているのかもしれないという期待を私に持たせるほどに。

「合わせる顔がなくて戸惑った。こんな変わり者の俺をずっと好きでいてくれたっていうのに、俺は全く気づかずに、それどころか他の人と付き合って…。酷い奴だって、自分自身でそう思った」

私の体は無意識に、小刻みに震えていた。

「だから、俺は学校を休んだ」
「でも…じゃあ何で、颯になったの…？」

問いかけると、零泉は少し考えたように間を開けてから答えた。

「別人になりたかった」
「えっ…？」
「無責任な話だとは思うけど…不登校になってから、俺は一条のことを好きになり始めていた」
「…愛のことを…？」
「ああ。でも俺は一条の想いに気づけなかった。だからのこのこと顔を出して告白するわけにもいかない。別れたから次点と付き合っただけ、そう思われても嫌だからな。だから俺は、別人になる必要があった。そして…見つけたんだ。別人になる方法を」

颯になった零泉の顔を見る。その方法は、おのずと導き出された。
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