ラブ&ロイド
「…うああああ!」

斎遠先生が叫び声を上げる。黒板前の実験机に隠れて見えなかったが、先生が歩いたおかげで先生の足が見えるようになった。

「…やっぱりそうか…この焦げた臭いは…」

先生の足は…膝上まで炎に包まれていた。

途端に、辺りが悲鳴に包まれた。

「おい、これマジでヤバいって!」
「逃げろ!」
「他の先生呼んで!」
「それより消防車と救急車が先でしょ!」

見ると、炎は黒板の方にまで広がっていた。零泉の予想通り、完全に火事だった。

「結、早く逃げよう!」

愛が手を引き、出口へと向かう。

「う、うん!」

この高校の実験室は廊下の端にあるため、ドアが一つしかない。そこにクラスメート全員、およそ四十人が一斉に詰めかけた。群れの最後尾となってしまった私は、ただ後ろから迫ってくる炎におびえながら、出られるようになるのをひたすらに待った。

「ドア閉めて!」

蛍が叫ぶ。下手にドアを開けていると、どこまで火の手が回るか分からない。バックドラフトという怖い現象もあるけれど、消防隊員の人が来るまでドアを開けなければいいだけの話だ。

「…はぁ、はぁ…」

私の息は、荒れていた。

「大丈夫…?」

隣で同じように息を切らしている零泉に話しかけた…つもりだった。

「えっ…」

零泉は、そこにいなかった。
< 46 / 50 >

この作品をシェア

pagetop