ラブ&ロイド
「まさか…」

嫌な予感がした私は、再びドアを開けた。

「ちょっ…結、何してるの!?」

葵の声に耳を傾けている余裕はなかった。普段なら到底耐えられないほど暑い実験室に、私は再び足を踏み入れた。

「零泉…」

私が見た零泉は、壁から落ちてしまった黒板に足を挟まれた斎遠先生を、引きずり出そうとしていた。

「…どうした…何故私を助ける…?」

しわがれた、というよりはかすれた声で、斎遠先生が言う。

「…私は…君を人間ではなくしてしまった…。おまけに関係のない三鷹家の人々まで、研究所の職員がその構成員だからという理由で巻き込んだ…。君を破滅させたのは私だぞ…? 君が助ける理由がどこにある、零泉君…」
「先生が今ここで死にそうになってるのを、見てしまったからですよ…」

人一人の力では、黒板は持ち上がりそうになかった。いてもたってもいられなくなった私は、零泉の傍まで走り寄り、黒板に手を掛けた。

「何してるんだ、三鷹! 来るな!」

私は首を振り、両腕に力を込める。

「一人でこんなことやってたって…限界があるでしょ? だから、私が手伝うだけ」
「三鷹が巻き込まれる必要はないんだ!」
「零泉だって、こんな所で死ぬわけにはいかないでしょ!」

昨日零泉が言っていた言葉を思い出す。

「零泉だって…愛のこと、好きなんでしょ…? その思い、伝えなくてどうするの!?」
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