あたし、彼女?




「ん、じゃあ、ちょいと失れーしまーすっと」



そう言って、ピョイとそこに腰を落とす早沢君。


おちゃらけた感じがなんだかおかしくて、フフフッと笑った。



ほんと、早沢君っておもしろい。



でも、


これが飛鳥だったらよかったのに。



早沢君と飛鳥を重ねてしまい、「はあ……」と、溜め息をつく。



こんな時に、溜め息をつくのは、隣にいる早沢君に、失礼なのはわかってるけど。



そう思っちゃうのは、やっぱり……飛鳥が大好きだからで。




どうしても重ねてしまう。


今、ここにいる早沢君が飛鳥だったら……って。




「弁当、食わねえの?」



肩を落とすあたしの隣で、早沢君がそう訪ねてきた。



あたしは少しでも落ち込んでると気付かれたくなくて、笑顔をつくって答えた。



「……食べるよ。けど、飛鳥がきたらね」



「ほほう、彼氏とお昼ですか。それはそれは……ラブラブそうで何よりで」



ニヤニヤとそう言ってくる早沢君。



「ぷっ、なにそれ。てか、ラブラブでもないんだよね、最近」



「えっ、まじ?なんかあったの??…ってそういや今朝、なんか不機嫌だったな……」



「でしょ? 朝ね、飛鳥がパンダ……じゃなくて、知らない子とイチャイチャしてるの見ちゃって、“なにしてんの?”って聞いたら教えてくれないし、それどころか“お前は後で”って……」



ヤバイ、思い出した抱けでも目の奥が熱くなる。


チラリと早沢君の方を見れば、さっきのお茶らけた顔付きとは打って変わって、真剣な顔をしてこちらを見ていた。




「……それで?」



「それで、飛鳥がなに話してんのって? なにしてんの?って聞いてきたとき、思わず、“教えないっ”って言っちゃったんだよね……。飛鳥、怒ってるのかなぁ」



怒ってるよね……。



だって、完璧眉間にシワよってたし……声だっていつもより低くて怖かった。



うう……。



泣きそうになって、顔を隠すようにうつむかせる。



すると、隣にいた早沢君が、ツンッとあたしの頭をコツいて。



「なに?」と顔をあげたあたしに、



「まあ、そんな暗くなんなって。 過ぎたことは仕方ねぇよ。 それに、今朝のことは言わなくて正解だったぜ?」



そう言ってきた。



「どうして?」



「だって、“あれ”はヒミツ。なんだろ? 言ったら意味なくなるじゃん」



首を傾げるあたしに、早沢君は「なに言ってんだよ」と笑いながらそう言った。




あ、そっか、



そこでハッと気づくあたし。





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