あたし、彼女?




「高原」



昼休みが近づく三時間目の休み時間。



目の腫れも大部引いてきて、
いつもの調子を取り戻しつつあったあたしに早沢君が声をかけてきた。




「あっ、もしかして、昨日言ってたやつ?」



「おう。 ちょっとボロくはなってるけどな~」



早沢君は手に持っていた紙袋を掲げてニッと笑う。



「大丈夫だよ。 全然。すごい、ありがとう~」



その袋の受けとると、中身を確認して、あたしはそう言った。


袋に入っていたのは、厚みのある手芸本で。


早沢君のお母さんが趣味で手芸にはまっていたときに買ったものだそう。



今ではすっかり使わなくなって、本棚に眠ってたみたい。



だけど、



あたしが〝記念日に手作りでなにかを作りたい。〟


と、佳子ちゃんと紗菜ちゃんに話してたところ、


それを聞いていた早沢君が、この本を貸そうかと、提案してくれたんだ。




「もう、捨てられてると思ったからあってよかったよ」



「そうだね。 あたし、こういうのはじめてだから持ってなくて……買うにしても高いし。だからほんと助かったよ。ありがとうね」



「それはよかった。返すのはいつでもいいから、………頑張れよ」



「うんっ、ありがとう」



「ふはっ、高原、〝ありがとう〟言い過ぎだろ」



「ふえっ!? な、なな。だって、ありがとうって……」



それ以外、言うことが……。



突然の指摘に、とっさに口を塞ぐ。



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