誰にでも優しい上司に困惑



「けど、凛さんと過ごした時間が、一番楽しかったな」



まさかの発言に
私の胸は締め付けられる


そんな事、言わないでよ…



大智さんの様子はわからない
今、大智さんを見たら泣いちゃう



凛さん、おやすみ



ソファから大智さんが立ち上がるのがわかる
行って欲しくない、


また、大智さんに触れたい、
そんな気持ちは
バタン、というドアの音で打ち消された



本当にこれで終わりだ


これでいいんだ、これで……






引越し当日は慌ただしくて
まともに大智さんと話が出来なかった


「俺、アパート行くから!終わったら大家に連絡すればいいんだろ?」


『はい、お願いします!』



行ってくるわ、
そう言って、出かけた大智さん


『お願いします』

いつもなら『行ってらっしゃい』
だけど、もう『おかえりなさい』と言えない


だから、言えなかった



私も急がなきゃ、と荷物をまとめた
いつまでもいたら、本当に動けなくなるような気がした
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