誰にでも優しい上司に困惑



大智さんが元カノと話し合ってくれた
もう私が嫌な思いをすることはない


そう安心していた





「いらっしゃいませ」


細川さんの声に、車検の書類を書いていた私は身体を起こし、客に目をやる


『いらっしゃ…い、ませ』



何しに来たのか、わからない
けど、かなりの般若面で
そして般若面の後ろには
無理矢理連れてこられたんだろう
下を向きながら恥ずかしそうにしている
可愛らしい人がいた



あー……これが、萌ちゃんか
見た目、柔らかい感じで可愛らしい
萌っていう名前がピッタリだ


なんて、人間観察をしていたら
般若面が私をとらえた


……あ、バサバサまつ毛だ
そう思っていたら、バシッと左頬に痛みが走った



「何をするんですかっ!!」


細川さんが慌てて私に駆け寄ってきた
何がなんだかわからない
何故、またこの女に叩かれないといけないんだ



前回は、大智さんの顔に免じて抑えていた感情は、今回は抑えられそうにない


細川さんも外崎さんも、般若面に何かを言っているが、私の耳には入ってこない
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