強引同期が甘く豹変しました
「凛子?」
ぼーっと突っ立っていると、横から私の顔を覗き込むように紀子が現れた。
「どした?なんかあった?」
「えっ?」
「や、なんかずっとぼーっとしてるから。次、コピー機、使っていい?」
「あ!うん!ごめん、どうぞどうぞ」
言いながら、慌ててコピー機から離れ、自分のデスクに戻る。
すると、その直後。
「いいなー、永井さん」
隣のデスクの小島ちゃんから、そんな声が聞こえてきた。
「ん?何が?」
彼女の方に視線を向けた私は、思わずそう問いかけた。
「何がじゃないですよー、頭ぽんぽんですよー」
「はっ⁉︎」
「さっき矢沢さんに頭ぽんって、されてましたよね」
「頭…?」
「はい、頭ぽんぽん」
「やっ、知らない、全然!されてない、ほんと全然、ないない。っていうかほら、仕事仕事」
何をそんなに焦っているんだと、自分の中の自分に聞いてやりたい。
「どうしたんですか永井さん、顔真っ赤ですよ?」
ついでに言うと、小島ちゃんにも言ってやりたい。
頭ぽんぽんとか私の顔が真っ赤とか、本当どうでもいいから仕事をせんかい。
「まぁでも、矢沢さんにあんな風にされちゃうと、誰だってドキドキしちゃいますもんねー」
「はっ⁉︎してないから。するわけないから。あいつはただの同期で」
「えーっ、B.Cのナンバーワン男子なのにー。いや、最近はB.Cナンバーワンってだけじゃなくて」
「なに」
「このビルの他の会社でも、矢沢さんは一番のイケメンだって噂になってるらしいですよ?」
…へぇーっ。社内人気に留まらず、社外にもあいつの噂は飛び出してるんだ。
そのうち、社内イチどころかこのビルイチ…なんて言われるかも?なんてのも、なきにしもあらず…か。