強引同期が甘く豹変しました
「おまえ先、風呂入る?」
「ううん、矢沢の後でいいよ」
やっと私たちの手が離れたのは、矢沢のマンションに着いて玄関のドアが開いた時だった。
「じゃ、先入るわ」
「うん…」
若干ぎこちない空気。
リビングに入っていった矢沢を見届け、私は居候させてもらっている自分の部屋に入った。
っていうか…何だったのマジで。
ベッドにちょこんと腰掛け、ついさっきまで矢沢と繋いでいた方の手をジッと見つめる。
「はぁっ…」
何がなんだかわからない。
心臓の音が、身体中にドキドキ響く。
もしかして私、男への免疫力低下してる?
コットンで拭くだけのメイク落としを片手に、鏡を見ながら自分を見つめた。
「ワケありの居候だし。あいつはただの同期だし。手くらい…何ともない。しっかりしろ、私」
ボソボソと独り言をつぶやいて、さっさとメイクを落としていく。
するとしばらくして、ドアがノックされた。
「はっ、はい!」
「風呂、終わったから。適当に入れ」
「わかった!」
すっぴんだし、ドア越しにそう答えた私は矢沢がリビングに入っていった音を確認すると、そっと部屋を出てバスルームに直行した。