強引同期が甘く豹変しました
「多分、森さんのことがあった頃じゃない?あくまでこれは私の予想でしかないけど」
そう言った紀子は、ミルクティーを飲みながらジーッと私を見つめる。
「でも、一年目っていえば、なんかあの頃ギクシャクしてたじゃん?森さんの一件で。凛子が矢沢のこと避けたりしてさ」
「…まぁ」
「でも、モツ鍋行った日の帰りにさ、私も聞いてびっくりしちゃったんだけど。矢沢って、もしかしたらずっと凛子のこと好きだったんじゃないかって、杉崎が言ってたの」
「そっ、そんなことあるわけないでしょ…」
「だってさ、不思議じゃない?いくら付き合いの長い同期とはいえ、親が来るなら彼氏のフリしてやるとか、それまで家に泊めてくれるとか。すぐに動いてくれたりさ。しかも、あんなにモテ男なのに矢沢ってずっと彼女もいなかったし、女の影みたいなのも全くなかったじゃん?」
紀子にそう言われた瞬間、何故か脳裏にあのミントブルーのルームウェアが浮かび、私は思わず口を開いた。
「…女の影ならあったよ?あいつの家の洗面所のクローゼットに」
「何?何か見つけたの?」
「可愛いルームウェアと、シュシュとか…。よく見てないからわかんないけど、たぶん他にもあったと思う」
「そっか」
「…だから。家に泊まりに来るような女だっているだろうし、あいつ、好きな人いるって言ってたし。昔はどうだったかは知らないけど、今は矢沢と私は、ただの同期っていうか。ピンチに現れた救世主と、お世話になってる居候っていうか…」
そう。ただ、それだけの関係だ。