強引同期が甘く豹変しました


「いずみ銀行ですよ!」

「えっ?」


い…ずみ銀行?


「矢沢さん!あのメガバンクのシステムセキュリティ、とったらしいです!」

「システム…って」

「超やばくないですか⁉︎」


セキュリティ…って。


「…やばい」


小さくこぼれた声は、私もみんなと同じく、やばいという言葉だった。

すご過ぎて、やばい。
嬉し過ぎて、やばい。

どういう表現が正しいのかはわからないけど。

やばいという一言の中には、たくさんの気持ちがギュウッと詰まってて。

…ジッとしていられなかった。
今すぐに、言いたかった。

そう思った瞬間には、私はもう席を立っていた。

営業部と繋がるドアに向かってスタスタ歩き、勢いよくそこを開ける。

すると、営業部の人たちに囲まれるように、矢沢はその輪の中にいた。


だから、そこまで近付いてはいかなかった。


「矢沢!」


ただ、名前を呼んだ。


「おう!どした?」


そして、こっちを見ながらそう聞いてきた矢沢に言ったんだ。


「あんたやばい!」


ただ一言だけ。どうしても、すぐに言いたくて。


「本当すごい!おめでとう!」


そう伝えると、胸がいっぱいになった。



多くの人々が利用している銀行や、保険会社、病院、企業などのサービスを動かしているのは、膨大な量のITシステムだ。

矢沢がいるB.Cシステムセキュリティの営業部は、誰もが知るメガバンクや企業などをクライアントとする営業を、各部門に分かれて担当している。

矢沢はその中で、三年前から銀行部門に配属された。


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