強引同期が甘く豹変しました
「もう…ダメだってば」
微かに聞こえてきた声で、ふと眠りから覚めた。
ゆっくりと目を開けると、いつもと違う光景が目の前に広がる。
ちらっと視線を動かしてみた。
あぁ……そうだ。
私、紀子の家に泊まらせてもらったんだっけ。
二日酔いのせいか、こめかみあたりにズキンという痛みを感じたけれど。
まだアルコールが抜けきっていない体がしんどくて、私は二度寝をかましてやろうと、そのまま眠りにつこうとした。
「だからダメだって…凛子がいるんだし」
だけど隣の部屋から聞こえてきたその声で、私の脳内は完全に目が覚めていく。
紀子の家の間取りは、リビングと寝室に分かれている1LDKで。
私はリビングのソファに寝かせてもらっていて、寝室のベッドでは、紀子と杉崎がふたりで仲良く眠っていた……はずだ。
「大丈夫だって、永井まだ寝てるだろうし」
「大丈夫なわけないでしょ?」
聞こえてくる紀子と杉崎の声に、とにかく私は気まずい状況しか浮かばなかった。
壁を挟んだ向こうでは、いまにも‘‘始まってしまう’’気配しか感じられない。
「絶対まだ寝てるって」
いやいや、杉崎。聞こえてるから。
それにもう、私起きちゃってるからね?
でも……泊まらせてもらってる恩義もあるし、このままそっとしておくべき?
寝たふりかまして黙って目を瞑るか?
や、いくら紀子が一番仲の良い同期で、二人が付き合い始めたばかりのほやほやカップルとはいえ…
…………うぅ。やっぱり無理だ。