強引同期が甘く豹変しました
だけど、当の矢沢には不安そうなところなんて全然なかった。
「とりあえず目標はメガバンク。でも、肩慣らしに地方銀行から攻めるわ」
なんて。むしろ余裕をかまして意気込んでいたくらいで。
銀行部門の担当になってからは地方への出張が増えていくと、いく先々でいろんなお土産を買ってきてくれて。
そしてそれを、同期会の飲み会でみんなで食べながら、今回のは星五つとか、これはハズレだねとか。あーだこーだと土産をつまみながらくだらない話で盛り上がる。
そんなことが、いつからか定番にもなっていった。
出世したら、ちょっと違う風を吹かせたり。
差を感じさせられたり。
なにかが変わると思っていた。
平凡な、一般コースのレールの上にいる私たちと矢沢との距離は、変わっちゃうのかなって、思ってた。
でも、矢沢は、矢沢のままだった。
明るいムードメーカーは、変わらずそのままで。
引き続き、頼りになるリーダー的存在で。
誰かが悩んでいたら、真剣に聞いてくれて。
最後には、やっぱり笑わせてくれて。
なんにも、変わらなかった。
出世したって、エリート街道まっしぐらになったって。矢沢は、矢沢のまま変わらなかった。