強引同期が甘く豹変しました


それは仕事ぶりも同じで。

心配して損したなーなんて思うほど、営業成績も変わらず好調をキープしていた。

何の心配もなく、順風満帆なんだなぁって、思っていた。


だけど、それは長くは続かなかった。

銀行部門にうつってから一年後。
矢沢は初めて同期会の場で仕事の悩みをこぼしたのだ。


「メガバンクが目標とか調子乗って言ってたけど。やっぱ厳しいっつーか…無理。全然無理。商談にすらもっていけない」


弱音を吐いたり、愚痴を言ったり。
そういうところなんて見たこともなかった私たちは、珍しくお酒をガブガブ飲みながらそんな言葉を口にした、矢沢の初めての姿に驚きを隠せなかった。

気の利いたことも、言えなかった。

だって私たちは、同期とはいえ矢沢に偉そうにアドバイス出来るような立場でもなかったし。

銀行の個人情報保護セキュリティは、新システムを導入している分、知識も薄かった。


だから、私もみんなも。

「大丈夫だって、矢沢なら」とか。
「まだまだこれからじゃん」とか。

そんな言葉しか、かけてあげられなかった。


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