強引同期が甘く豹変しました
感情って、コロコロ変わる。
「ふぅ…」
イライラしていた気分は、シャワーを終えると共に不思議とすっかりおさまってしまっていた。
早めにお風呂を済ませた私は、頭にタオルを巻いたままそっと洗面所から廊下に出て。
矢沢、もう帰ってきたかな?
そう思いながら、ふらっと玄関に目を向けた。
すると、すぐにおかしなことに気が付いた。
靴?なにあの靴…。
ネイビーのパンプスが…私の靴の隣に並んでいる。
えっ?何でパンプス?そう思った瞬間…
突然後ろで、ガチャ、と音が鳴った。
私は反射的に、すぐに後ろを振り返る。
「誰?」
ずいぶんと落ち着いた声色で、そこにいた女性は私に聞いた。
女は全然驚いていない。驚いて、焦っているのは私だけのようだ。
「えっ…」
そっちこそ誰なんだと聞き返してやりたい。
だけど、もしかしたら…この人は矢沢の…そう思うと、絶対にヘタなことを言ってはいけないと躊躇った。
「もしかして、亮太の彼女?」
「いっ、いえ!そんな!全然!違います!」
首をブンブン振りながら慌てて答えた。
「ふふっ、そんな必死で否定しなくても」
女の人はそう言うと、変わらず落ち着いた表情で私をジーッと見ている。
年齢は、同じくらいか、少し年上だろうか。
綺麗なオトナ女子って感じは、年下には見えなかった。
栗色のミディアムヘアに、毛先がふわりとしているゆる巻き。
背は…たぶん結構高い。170センチ?いや、もしかしたらそれ以上くらいもありそうなモデルみたいな長身だ。
手足だって長いし、パッと見ただけでスタイルの良さが伝わってくる。
平凡な背丈なうえ風呂上がりのすっぴん状態の私とは、まるで雲泥の差。
っていうか…めっちゃこっち見てるし。
視線を避けるようにサッと目をそらすと、私は何も言わずに黙ってうつむくことしか出来なかった。