強引同期が甘く豹変しました


「はい」

私は冷静に、その電話に出た。


「あ、永井?ごめん、連絡遅くなって」

「別に…全然大丈夫」


申し訳なさそうに謝る矢沢に、私はそっけなくそう答えた。


「メシ、作ってくれてたよな?」

「まぁ…一応、あんたに頼まれたからね」


嫌味っぽくそう言うと、矢沢は少し間を空けて、私に言った。


「ごめん…絶対食うから。冷蔵庫、入れててくれないか」


どういう…意味?冷蔵庫って…。


「…まだ、帰ってこれないの?」

「や、ちょっと色々あって。何時に帰れるかわからないんだ」

「…仕事?」

「いや、仕事はとっくに終わってるんだけど」


そう言われた瞬間、私は悟ってしまった。

…へぇーっ、やっぱりね。そういうことね。


「了解、冷蔵庫にいれとく」

「おう。ありがとな」

「じゃあね」



矢沢の「おう」という声を聞くと、私はさっさと通話終了を押した。


「…バッカみたい」


ベッドに携帯をポンと投げ、私はそうつぶやいた。

本当、バカみたい。
矢沢のことなんて、待つんじゃなかった。

一人でさっさと食べて、さっさと寝ておけば良かった。
無駄な時間を過ごしてただけじゃん。


苛立ちの炎が、再び燃え始めていくような気がした。

スッとベッドから降り、キッチンに向かい、私はハヤシライスソースが入った鍋に火をつけた。

バターライスをレンジで温め、サラダにかけていたラップを外す。

夜中でも構うもんか。食べてやる。

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