強引同期が甘く豹変しました
そしてその日は一日中、矢沢に会わないでいいように、社内でもあいつを避けるように行動した。
一日に数回は、書類の受け渡しがあったり、確認に行ったり。だいたいフロアを行き来するのが当たり前だったのに。
情けないけど、完全に公私混同だった。
矢沢と顔を合わせたくない。
ただそれだけの理由で、営業部に行かなければならない時は後輩の小島ちゃんや他の誰かに行ってもらったりして。
結局一度も、私がガラスの壁の向こう側に行くことはなかった。
それから…矢沢も。
一日中営業に出ていたのか、その日は珍しく総務部には入ってこなかった。
結局オフィスでは、顔を合わせることもなく仕事は終了したけれど。今朝言い合ってしまった気まずさは、半日が経ってもまだ残ったままで。
居候の身分では矢沢の家に帰ることも気が引けてきて。いつもなら何でも話せる紀子にも、何も言えないまま、その夜は女性専用のカプセルホテルに泊まった。
だけど、寝つきは悪いし寝てもすぐに目が覚めるし、なかなか眠れないまま朝を迎えた私は翌日も昨日と同様に矢沢と顔を合わせないように結局営業部には立ち入らなかった。
「で?何があったの?」
「何っていうか…」
駅前に出来たばかりの小洒落たダイニングバー。
その日の仕事を終えて紀子と一緒にオフィスを出ると、少し付き合えと誘われた私は、そのままここに連れてこられた。
「昨日からずっと矢沢の様子もおかしかったらしいから、杉崎も気にしててさ。今、矢沢と二人で飲みに行ってるみたい」
「…そう」
「っていうか、何があったわけ?昨日も今日も全然営業部には行かないし、小島ちゃんとか、なんかあったんですかね?って凛子のこと心配してたんだよ」
「えっ?」
「会議資料持ってくだけなのに、それすらも頼んだりしてたでしょ?秒で行ける距離なのに」
「…ごめん」
自分の行動を振り返ると、本当にダメ人間過ぎてますます情けなくなってくる。