強引同期が甘く豹変しました
「はぁっ……寒っ」
かじかむ手をコートに突っ込み、白い息を吐きながら冬の空を見上げた。
電話してから、もう30分くらいは経つだろうか。
寒さに震えながら、夜の駅前でひとり。
バカみたいにジッと立ち尽くしている俺は、もしかしたら本当に相当なバカなのかもしれない。
別に、先に帰ってりゃいいのに。
こんなに冷え込んでいる夜に、いつ帰ってくるのかもわからないあいつをわざわざここで待ってる必要なんてあるか?
そう思うと、自分の今の行動がよくわからなくなってくる。
それでも、駅から人が流れてくるたび、その中にあいつの姿を探して。
まだかまだかと帰ってくるのを待っている俺は、多分…一分一秒でも早く、あいつに会いたいからなんだと思う。
昨日は朝っぱらからあんな言い合いをしてしまったし。
もしかしたら、今日もウチには帰ってこないんじゃないかとか。
明日もまた、会社でもわざとらしく避けられるんじゃないかとか。
杉崎と飲みながら色々話してると、なんだか急に焦りだしたっていうか。
居ても立っても居られず、帰りにあいつに…電話をかけてしまっていた。
「つーか、結局それって好きだってことだろ?おまえこんなとこで俺に相談してるヒマあんの?本当に永井、長野に帰って見合いしようかって考え始めてんじゃねーの?動くならさっさと動けよ」
ちょっと、偉そうに。
でも、珍しく真剣な眼差しで。
ついさっきまで一緒にいた杉崎は、まるで俺に忠告するようにそんなことを言ってきた。
「…俺だって、考えて」
そして言い返そうとした俺の言葉に聞く耳も持たずに。
「頭で考えてる時間なんてないから。そんな余裕かましてる場合か?ゆっくり考えてて間に合うわけ?どうにかしたいならすぐ動く!考えるより行動!じゃなきゃマジで手遅れになるぞ」なんて。
別れ際、そんな発破かけられたら、何故か素直に「おう。わかった」って、答えてしまってた。