強引同期が甘く豹変しました



「あー、緊張する…」


日曜日の午前10時。約束の日。

私と矢沢は、東京駅近くの喫茶店で父と母を待っていた。

来た時にわかりやすいように窓際の席に座り、ホットコーヒーを飲みながらぼんやりと外を見つめる。

すると、約束の時間から10分程で父と母がお店に入ってくる姿が見えた。


「お父さん!こっちこっち」

先に店内に入ってきた父に声をかけると、私に気付いた父がサッと右手をあげ、後ろにいた母もこちらを見て手を振りながら歩いてくる。

すると、隣に座っていた矢沢が立ち上がり、目の前の席に着いた父と母にお辞儀をした。

父と母も、矢沢のそんな姿に慌てた様子でぺこっと頭を下げている。


「初めまして。凛子さんと同じ会社で働いている、同期の矢沢亮太といいます。よろしくお願い致します」


凛子さんって…初めて聞いたわ。

矢沢にさん付けなんかされると、なんだかすごく変な感じで痒くなってくる。


「凛子の父です」
「母の、京子です」


お母さんも。京子です、なんて名前まで言っちゃってるし。

何でだろう。さっきまで緊張し過ぎて吐きそうなくらいで…今は今でかしこまった空気なのに。
凛子さんと京子です、に、思わず笑ってしまいそうになる。

だけど当然、笑えるような雰囲気でもない。


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