強引同期が甘く豹変しました


「おっちょこちょいなところもあったんですけど、仕事は本当に真面目だし、同期の中では彼女が一番しっかりしてて、先輩にも可愛がられてましたし、後輩が出来たら凛子さん凛子さんって慕われてました。好きなところを挙げればキリがないんですけど。
一番は、笑顔っていうか。とにかく彼女の笑った顔が好きで。だからそれが見たくて、笑わせるために…いつもわざとふざけてたりしたんですけど」


矢沢はそう言うと、数秒の間を空けて続ける。


「30歳までに結婚しないと、田舎に帰ってお見合いしてしまうってことを、偶然…聞いてしまったんです。そしたら、もういい加減ふざけてないでちゃんとしないとって。彼女が自分のそばから居なくなってしまう前に、ちゃんと気持ちを伝えなきゃ間に合わなくなるって…そう思って」


親に対して、失礼がない言葉を選びながら、話してくれている気がした。

矢沢の真っ直ぐな気持ちが、また改めて伝わってくる。


「だから凛子さんに、ずっと好きだったことを伝えました。凛子さんは、そんな僕の気持ちを受け入れてくれて。それから、結婚を前提にお付き合いをさせていただいています」


ああ…完璧過ぎて拍子抜けしそう。

昨日からずっと緊張してたくせに、やっぱり矢沢は…勝負強い。
パーフェクトだ。


「…そうでしたか。あまりそういった話は凛子からしてくることがなかったので、ずっと心配していたんですが。今ようやく、安心できました」


厳格な父の顔には、笑顔が浮かんでいるし。


「凛子から同棲するって連絡をもらった時、しばらくお父さんソワソワして落ち着かなかったのよ?あいつは家事をちゃんとできるのかとか、朝が弱いから心配だとか。ちゃんと…結婚出来るのかって」

「いちいち余計なことを言うな、今安心できたと言っただろう」


母は嬉しそうにペラペラ話し、余計なことを言われた父はムッとした表情でコーヒーを飲んでいる。

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