強引同期が甘く豹変しました


父と母には、話せていない序章もある。

矢沢と私の全ての始まりを伝えたわけではない。


例えば…

最初の同棲相手は、須藤康介という結婚願望がゼロの男だったとか。
その人との同棲生活は、たったの二カ月で終わり、帰る家がなくなってしまったこととか。

仮の彼氏という作戦で、父と母にウソをついてひとまずは逃げ切ろうと企んでいたこととか。


全てを、包み隠さず話したわけじゃない。


だけど、私は思う。


「でも、7年も片思いしてたなんて純愛ね」

そう言って笑う母。

「末っ子ってこともあってワガママな娘だと思うけど、これからもよろしく頼むよ」

そう言って、頭を下げる父。


そして…


「ありがとうございます!よろしくお願い致します!」


大きな声で、父と母に向かってそう言って頭を下げた矢沢。


そんな三人の姿を見ていると、余計な序章なんて必要ない。

大事な部分だけを伝えるだけで、良かったんだって。


< 200 / 202 >

この作品をシェア

pagetop