強引同期が甘く豹変しました
それからコーヒーを飲み終えた私たちは、矢沢の知り合いが経営している不動産仲介業の事務所に向かい、そこで私は矢沢の友人だと紹介してもらった。
矢沢の知り合いだという推定年齢50歳くらいの佐々木さんは、物腰が柔らかくて感じの良いオジさんだった。
私が住みたい物件の希望条件を伝えると、すぐにその場でいくつか物件をピックアップしてくれた。
今はとても便利な時代だ。
物件の資料を見せてくれるだけではなく、ネットをテレビに繋いで実際そこに行かなくても内装の画像や動画を一つ一つ見たりすることができる。
それで気になる物件が見つかったとしたら内覧に行く、という流れになるし、先にいろいろと情報が知れることはとてもスムーズだと思う。
そのおかげで、三つほどいいなと思った物件が見つかった。
しかし内覧に行く以前に、入居にかかる費用が問題だった。
私の希望条件に出したエリアにある1LDKは、家賃はもちろんのこと敷金礼金も金額が高い。
1Kや1ルームの物件でもそれなりの値段がした。
初めての一人暮らしで東京に出てきた時は親が全て用意してくれていたけど、いざ自分でこうして探してみると改めて感じた。
東京の大学に行くと、親の反対を押し切って長野から出てきたけれど。
あの頃は私が一人暮らしするために、親にはたくさん負担をかけていたんだなって。
なんだかそんなことを思うと、胸の奥がきゅっとなった。