強引同期が甘く豹変しました
「でも俺、凛子のことは好きだよ。結婚はしないでも、ずっと一緒にいられたらなって思うし」
目線は変わらず携帯に向いているくせに、軽々しく好きとかずっと一緒とか。
そんなことを言えてしまう康介が信じられなかった。
ふざけてるの?バカにしてる?
無神経にもほどがある。
「…ちょっと黙って」
「えっ?」
私の声に反応するように、康介はやっとこっちを向く。
数秒目を合わせた私は、康介を見つめて口を開いた。
「ずっと一緒にいたいなら……結婚したって同じじゃない?」
「だからー、俺は結婚っていう縛りが嫌なわけ。そんな縛りなくたって、これからも一緒にいればいいじゃん。事実婚、みたいなさ」
「事実婚って何?私は普通に結婚したいだけなんだけど」
「へぇーっ…普通にか。まぁ人それぞれだもんな、その普通への価値観は」
もしかしたら、なんて思った私がバカだった。
もしかしたら、ちょっと待ってくれとか、考えさせてほしいとか。
そうだな、ずっと一緒にいるならやっぱりちゃんと結婚しよう、とか。
心を入れ替えて、そんなことを言ってくるかもしれないなんて…少しでも期待した自分が情けなかった。
「そこが合わないなら仕方ないよ。普通に結婚したいなら違う誰かを探した方がいんじゃね?」
終わりなんて、来るときはあっという間だ。
「…そう。言いたいことはわかった。じゃあ、そうさせてもらうよ。価値観が違いすぎる人とこれ以上一緒にいる意味なんてないし」
「はぁ?」
「とりあえず持てる荷物だけ先に持って出てくから。残りは一週間以内には取りにくる」
「はいはい」
私たちの関係は、康介の短いその言葉とともに…終止符がうたれた。