強引同期が甘く豹変しました
「はぁ?マジかよ…」
目的のモツ鍋屋に着くと同時に聞こえてきた矢沢の呆れた声に、私は慌てて言葉を返す。
「すぐ開くじゃん。ちょっと待ってたら」
モツ鍋屋の開店時間は、まさかの17時からで。
時間まで確認していなかった私達は、冬空の下で20分程寒さに震えながら待つことになった。
「つーか、普通開店時間とか調べて来るだろ」
「もう暗くなってきてるんだから開いてると思うじゃん」
「何だそれ、暗くなってきたら開けるって、そんな適当な店あるかよ」
「ありますー、田舎とか結構そんな感じだよ」
「そんな感じってどんな感じだよ。客をナメてんな、田舎モンは」
「そう?自由でいいじゃん、そういうのも。都会育ちの人にはわからないだろうけど」
「ああわからないね、スーパー都会っ子だから、俺」
ああ言えばこう言う。
本当…昔っから矢沢と私はいつもこんな感じだ。
テンポよく会話出来るのは心地いいけど。
いつからだろう?こんなふうになったのは。
「ま、とりあえず乾杯」
「何に?暖かさに?」
ようやく店内に案内された私たちは、運ばれてきた生ビールを片手に目を合わせて笑った。
「そうだな。店の温度と…おまえのシングルライフ再開に?」
「はい?ちょっと、それは余計じゃない?」
「ははっ、まぁとりあえず乾杯」
「意味わかんないけど。まぁ、カンパーイ」
ジョッキを軽く当て合い、そのまま口に運んだ。
「うまっ!」
「うん、うまい!でも、寒い!」
私が笑ってそう言うと、矢沢も笑う。
看板メニューの博多風モツ鍋が運ばれてくると、目の前のコンロに火がつけられたと同時に私達は暖をとるように二人してコンロに手を近づけた。
「やっと暖まってきたね」
「お。やっぱ冬は鍋だな」
冷え切っていた体がようやく元に戻り始めると、私はふとあることに気がついた。