強引同期が甘く豹変しました
「ま、俺からすればかなり迷惑な話だけどな」
「えっ?」
「だって無駄な時間過ごしてたようなもんだろ」
無駄な時間?
「どういうこと?」
そう聞き返したと同時に、矢沢の携帯が鳴った。
「だから、森のことがもっと早くにわかってたら、21回目は断わられてなかったっつーことだろ?」
「21…回目?えっ?」
「だーかーらー、森に彼氏が出来たって四年前からわかってりゃ、おまえとこんな風に飯行ったり?飲み行ったり?誘えばもっと早くに行けてたっつーことだよ。とりあえず飲め」
やや苛立ったような口調で矢沢はそう言うと、片手で携帯を触りながらもう片方の手でテーブルの隅に取り付けられてある呼び出しボタンを押す。
するとすぐに店員さんが来て、メニューを見ながら矢沢が注文を始めた。
「生四つと〜、あとホルモン焼き二人前ください」
はっ⁉︎何で⁉︎
もう酔ってる?いや、矢沢はそんなにお酒に弱くない。
イライラしておかしくなったか?
鍋もあるのにホルモン焼き二人前だ?
いや、その前にビール四つって…
「ちょっと矢沢」
鍋から立ち上がる湯気越しに矢沢を見ると、キョトンとした顔と目が合った。
店員は、そそくさと奥へと引っ込んでいく。