強引同期が甘く豹変しました



「ま、俺からすればかなり迷惑な話だけどな」

「えっ?」

「だって無駄な時間過ごしてたようなもんだろ」


無駄な時間?


「どういうこと?」


そう聞き返したと同時に、矢沢の携帯が鳴った。


「だから、森のことがもっと早くにわかってたら、21回目は断わられてなかったっつーことだろ?」

「21…回目?えっ?」

「だーかーらー、森に彼氏が出来たって四年前からわかってりゃ、おまえとこんな風に飯行ったり?飲み行ったり?誘えばもっと早くに行けてたっつーことだよ。とりあえず飲め」


やや苛立ったような口調で矢沢はそう言うと、片手で携帯を触りながらもう片方の手でテーブルの隅に取り付けられてある呼び出しボタンを押す。

するとすぐに店員さんが来て、メニューを見ながら矢沢が注文を始めた。


「生四つと〜、あとホルモン焼き二人前ください」


はっ⁉︎何で⁉︎
もう酔ってる?いや、矢沢はそんなにお酒に弱くない。

イライラしておかしくなったか?
鍋もあるのにホルモン焼き二人前だ?

いや、その前にビール四つって…


「ちょっと矢沢」


鍋から立ち上がる湯気越しに矢沢を見ると、キョトンとした顔と目が合った。

店員は、そそくさと奥へと引っ込んでいく。

< 58 / 202 >

この作品をシェア

pagetop