強引同期が甘く豹変しました
「マジかー。そりゃ飲みたくもなるよね」
「…うん。飲まなきゃやってられない!」
賑わう焼鳥屋のカウンターで、私はジョッキに入っている2杯目の生ビールをゴクゴク飲み干す。
「まぁ、今日はとことん付き合うから!凛子の気が済むまで」
「…ありがと」
肩を並べて座るのは、会社の同期の中澤紀子(なかざわきこ)。
夜の10時。
急に電話して呼び出したというのに、紀子はすぐに私の元へと駆けつけてくれた。
「っていうか、そもそも結婚する気がないなら康介くんももっと早く言えよって感じだよね」
「でしょ?そうだよね?アラサー女子の貴重な時間を何だと思ってんだって感じ!本当ふざけてるとしか思えない」
「同棲まで始めてたのにね…」
「あーっ、ムカつく!本当、何で私あんなやつと同棲なんてしてたんだろ。どこが好きだったのかすらわかんない。はぁっ、最後に一発くらい殴ってやればよかった」
「じゃあ今から一発殴りにいく?」
「いや、殴る価値もないかも」
「ふふっ、確かにそうだね」
苛立っていた気持ちは、紀子のおかげで少しずつ落ち着きを取り戻していった。
ほとんど康介の悪口のような会話になっていたけど。
紀子といると、いつものように笑っていられた。