強引同期が甘く豹変しました
「じゃ、行くか」
お店の入り口にあるカウンターに向かうと、すでに支払いを済ませていた矢沢がそう言って振り返った。
「えっと…あ、お金。いくらだった?」
「気にすんなって、飯誘ったの俺だし」
「や、でも紀子達の分も払ったんでしょ?気にするよ…」
「いいって。いちいち気使う仲かよ」
矢沢はそう言いながら先に店の外へ出て行く。
申し訳ないな、と思いながらも私は矢沢の言葉に甘えさせてもらうことにした。
「ありがとう!ごちそうさま」
「どういたしまして」
歩き出していた矢沢の隣まで駆けると、ふいに矢沢の横顔がこちらを向いた。
数秒、目が合った。
矢沢は歩きながら、何故か私をじっと見下ろす。
「なっ、何?」
「ん?別に」
「別にって何よ」
「んー。寒いか?」
「えっ、あぁ。まだ大丈夫。今出て来たばっかりだし。またすぐ寒くなるだろうけどね」
話しながら、同じ歩幅で歩いていた。
だけど、次の瞬間。
「ったく、仕方ねえから貸してやるよ」
そんな声と共に、温かいマフラーが突然ふわりと首元に巻かれた。