強引同期が甘く豹変しました
えっ?ちょっと待って。
こういうの、ずっと憧れてたやつだ。
一度でいいからされてみたかったやつだ。
思わず、首元のマフラーに触れた。
「いっ、いいよ、矢沢だって寒いでしょ」
だけど突然の出来事に、何故か私は慌てていた。
すぐに巻かれたばかりのマフラーをほどこうと、手をやった。
「いいから巻いとけってば」
だけど矢沢にその手を取られ、ついでに巻き直されてしまう。
「あ…りがと」
言いながら、思わず俯いた。
矢沢がマフラーなんて巻いてくるからだ。
さっきはガッカリだとか、あんなに怒ってたくせに。いきなり優しくて、調子が狂う。
きっと寒さ対策のために、マフラーを貸してくれただけ。
そう。それだけなのに。
何で?今、私の心臓の動きが変なんですけど。
ドラマなんかで見たことがあった、いいなぁって思っていたような。そんな理想的なシーンに重なったから?
こういうことをサラッとしてくれるようなシチュエーションに、憧れていたからだろうか。
しかも、相手は矢沢だ。
悔しいけど…このルックスで今のをやられると、意識したくなくても、意識せずにはいられない。
きっと私だけじゃない。
女ならたぶん、誰でも意識してしまうはずだ。