強引同期が甘く豹変しました
だけど…
運ばれてきたばかりの焼き鳥に手を伸ばした時だった。
「でもさ、康介くんと終わっちゃったってことはだよ?大丈夫なの?」
「何が?」
「いや、凛子言ってたじゃん?30までに結婚しなかったら実家の田舎でお見合いさせられるとか」
「…うぅ。それ、今言う?」
紀子から言われた言葉で、口に運びかけていた焼き鳥がカウンターの上に戻る。
「ごめんごめん」
「や、別に謝んなくてもいいんだけどさ。私もぶっちゃけ、それが一番頭の中でグルグルしてるし」
むしろ、康介と別れたことよりも、親からのあの忠告の方が、正直私を悩ませていた。
「だよね…。てか、どうすんの?別れたってことは、また住む家だって探さなきゃってことでしょ?」
「そうなの。どうしよう……」
二ヶ月前。
学生時代から長年一人暮らしをしていたワンルームマンションを引き払い、私は康介の住むマンションで、同棲をはじめた。
だけどその康介と別れたイコール、私は必然的に同棲していたマンションを出て行かなきゃいけないわけで。
つまりは、私が帰る家はなくなってしまったわけで…。