強引同期が甘く豹変しました
それからしばらくは、ずっとドキドキがおさまらなかった。
駅に着いて電車に乗っても、肩が触れただけでいちいち心が反応してた。
電車を降りて歩いていても、巻かれたままのマフラーのせいで、なかなか平常心を取り戻せなかった。
「ここなんだ…昨日まで住んでたマンション」
だけどようやく同棲していたマンションの前までたどり着くと、今度は違う意味でドキドキしていた。
荷物を取りに行くとはいえ、元カレになってしまった相手の家に今から行かなければならないからだ。
「そっか。じゃあ、俺ここで待ってればいい?一人で運び出せそうか?」
「うん…同棲始めた時、ほとんど服とか以外は処分してたから。そんなに荷物はないと思うし、すぐ出てこられると思う」
「オッケー。じゃ、行ってこい」
「うん」
矢沢に見送られながらマンションの入り口を通り抜けるとエントランスを進み、エレベーターに乗り込んだ。
住んでいた6階のボタンを押すと、エレベーターは上昇していく。
ここにいたのは、ほんの二カ月だけだった。
二カ月前には、こんなことになるなんて思ってもいなかったな…。
ぼんやりとそんなことを考えているうちにエレベーターのドアがゆっくりと開いた。