強引同期が甘く豹変しました
6階に降り立つと、カバンの中からキーケースを取り出し、まだ着けてあったままの鍵をそこから外した。
残りの荷物を取りに来るまでは持ってなきゃいけなかったけど。意外に早く返せることになったと思うと心なしか気がラクになった。
とはいえ、昨日からは他人同士になったわけだから。
勝手にガチャ、と玄関を開けるのは気が引けてきて。私はひとまず玄関のインターホンを押し、ドアの鍵を回した。
そしてそっと、家に入った。
玄関には康介のお気に入りの靴がいつものように並んでいた。
短い廊下を進み、リビングのドアを開ける。
するとリビングに康介の姿はなく、少しだけホッとしている自分がいた。
家にいるのはわかっているのに。
わざわざインターホンまで押したのに。
部屋から出てこないなんて、康介はきっと出て行く女のことなんてどうでもいいんだろう。
私はすぐにリビングのクローゼットを開け、置いていた紙袋を、3つ、4つ適当に大きめなものを選んで取り出した。
とにかくさっさと詰めこんでしまおう。
そう思うと途端にスイッチが入り、リビングの壁につけていたお気に入りの掛け時計や棚に飾っていた小物類たちも、スイスイ紙袋の中へ投入されていった。