強引同期が甘く豹変しました
リビングが済んだら、次は洗面所に向かった。
昨日は一分一秒でも早く出て行きたくて、化粧水とかドライヤーを持って出るのを忘れていた。
だからそれらも全て、休むまもなく次々にまとめていった。
すでに膨らんでしまった紙袋を二つ玄関に置くと、まだペチャンコのままの紙袋を手に、再びリビングに戻った。
隣接する部屋を数秒見つめ、私はドアノブに手をかけた。
ドアを開けると、康介がベッドの上で携帯を触っていた。
一瞬こっちを見たけれど、視線はすぐに携帯の画面へと戻る。
「残りの荷物、取りに来ただけだから」
「お」
帰ってきた言葉は、たったそれだけだった。
本当…この人との同棲って何だったんだろうか。
呆れながら部屋のクローゼットを開け、かさ張ると思って持ち出せなかったコートやカバンなどを適当にバシバシ紙袋に詰め込んでいく。
ペッチャンコだった二つの紙袋は、あっというまにパンパンになっていく。
それでも、全部は運び出せそうにはなかった。
「残りはもう、捨ててくれていいから」
断捨離したと思えばいい。
絶対に必要だと思うものだけ持ち出せればいいか。
スパッと頭を切り替えると、康介にそう告げて部屋を出た。
康介は、最後まで何も言ってはこなかった。