強引同期が甘く豹変しました
「えっ…いいの?鍵、持ってて」
正直動揺していた。
父と母が来るまでの一週間、ここに居候させてもらうわけだけど、鍵まで持たせてもらっていいのかなって。
そう思うと、何だか悪い気がして躊躇ってしまった。
だけど矢沢はキョトンとした顔で口を開く。
「朝は一緒に出れるとしても、帰る時間が同じってことはないだろ?お互い仕事で遅くなる時もあるし」
「あ…うん」
「だから持ってろってこと。じゃなきゃ俺が帰ってくるまで、おまえもここに帰ってこれないだろ」
矢沢はそう言うと、テーブルの上に置かれた鍵を、スーッと私の方に滑らせるように差し出す。
「ごめんね…本当、ありがとう」
私はそれを、素直に受け取らせてもらった。
背筋をシャンと伸ばし、矢沢を真っ直ぐに見つめる。
「日曜日まで、よろしくお願いします」
そしてそう言いながら、深く頭を下げた。
「少しだけ、お世話になります!」
力強くそう言って、ゆっくりと顔を上げる。
すると矢沢は吹き出すように笑って。
「なんか気持ち悪いな、まぁ、はいはい。こちらこそ、よろしくな」
爽やかな笑顔でそう応えてくれた。
人生の大ピンチ。
そんな私の困った事情から始まった、可笑しな一週間の同居?生活。
だけどまさか、これが全ての始まりになるなんて。
私はまだ…気付いていなかったーーーー。