ふたり








「……わかりました!
本当、突然だったのにありがとうございます」


「いえいえ、お気持ちは本当に嬉しかったですよ」


「これからも、ヒメ先輩について行っても良いですか?」


「ええ構いませんよ。一緒に絵を描きましょうね」


「はいっ!
…そういえばヒメ先輩、聞いても良いですか?」


「何ですか?」


「ヒメ先輩の好きな人って、どんな人ですか?」





…後輩の何気ない質問は、俺に良い影響も悪い影響もあるだろう。

無意識に手が震えてきた。





「……とても、見ていて癒される、可愛らしい方ですよ」




ヒメの話すトーンが、少し上がった気がした。

常に一定のトーンで話すヒメにしては珍しい。




見ていて癒される、可愛らしい方。

…俺じゃねぇじゃん。

俺なわけ、ねぇじゃん。

どーして俺、期待なんてしてんだろ。

ヒメの好きな奴は俺じゃないかって、どこかで期待してた。






俺なわけ…ねぇじゃん……。








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